7月半ばにドイツ西部やベルギーを中心に甚大な被害をもたらした豪雨による洪水はルクセンブルクでも爪痕を残しました。ルクセンブルクでは人的被害はなかったものの、川が決壊し幅広い地域で建物やインフラに深刻な浸水被害が発生しました。総被害額は1億2千万ユーロ程にのぼるそうで、政府の支援が打ち出され、現在も復旧作業が続いています。より被害が深刻だったドイツやベルギーでは多くの死者が出ており、今回被害に遭われた方々に心よりお見舞い申し上げます。これを機会に、被害に遭った各国で洪水時の警報や避難指示、避難行動のあり方が議論されています。将来の被害を少しでも食い止めることにつながれば、と祈ります。

一年の延期を経てついに開幕した東京オリンピックですが、様々な意見を持つ人がいる中、やはり高みを目指すアスリートの姿はテレビ越しの我々に理屈抜きの感動をもたらしてくれるものですね。ルクセンブルクのアスリート達も各競技で力をつくしてます。注目されたのが、卓球女子シングルスに58歳で出場したニー・シャーリエン選手。初戦で41歳年下の選手とフルセットの激戦をくり広げ、メディアでもSNSでも驚きと称賛のコメントとともに紹介されました。5年前のリオ五輪の時とは別人のように表情さえ動かさないプレースタイルに驚きましたが、試合後の茶目っ気あふれるインタビューを見て、今の年齢でも続けられる方法を模索した結果なのだろうと納得しました。来日した選手たちは、限られた行動範囲の中でも試合会場や選手村で日本との出会いを楽しんでいたようです。

コロナ渦でオフィスワーカーの一部ではテレワークがかなり定着したと感じます。もともと日本と比較してテレワークが普及しているヨーロッパでも、2020年前半の時点で「常に在宅勤務が主体」と回答した人の割合は、フィンランドやルクセンブルクで約4人に1人にのぼり高い数字でした。欧州では昨年のコロナ感染症拡大局面で法的強制力のあるロックダウンが打ち出され、事業継続が課題となりました。ルクセンブルクは金融機関をはじめ多くの企業がロックダウン宣言と同時にテレワークへの移行を速やかに行い、影響を限定的に抑えることに成功しています。周辺3カ国から約20万人の通勤労働者を受け入れるルクセンブルクでは、周辺国と協定を結び、越境労働者が勤務地であるルクセンブルクで個人所得税課税を受け、居住国では非課税となるための条件である年間テレワーク日数上限を一時的に緩和しました。EU統計局の調査では、2019年から2020年の賃金労働者の労働時間の減少はルクセンブルクでは4.1%でした。日本では、コロナ渦でいったん伸びを見せたテレワーク普及率がまた下がり始めていると様々な機関の調査で報告されていますが、事業継続性の確保という側面からもいつでもテレワークできる体制は重要と感じます。

欧州各地で開催される主要なテックイベントの一つとして、毎年世界約70か国・5000人以上が集うルクセンブルクのテックカンファレンス『ICT SPRING EUROPE 2021 / SPACE FORUM』(9/14・15開催)。今年は、リアルとオンラインどちらでも参加のできるハイブリッド開催となりました。今年ルクセンブルク経済省では、当事務所(東京)を含めた世界各地のルクセンブルク貿易投資事務所が推薦するスタートアップ向けに、メインセッションでピッチを行う機会を提供します。未だに海外出張が難しい中、欧州市場にご関心のある起業家の方々にこの機会をご活用頂き、皆さまの製品・サービスのヨーロッパでのプロモーションの一助になれば幸いです。 同イベントに併催される『Mastermind Summit』は今回登場する新コンテンツで、イノベーションにフォーカスし、スタートアップ企業とVC、投資家のネットワーキングを促します。「ディープテック」「フィンテック」「ニュースペース」の3つのカテゴリーに則した講演やラウンドテーブルが行われ、その合間にはピッチコンテストも予定されています。今年も日本のスタートアップの勇姿を見られることを期待しています。

昨年、事業設立に関する冊子「ルクセンブルクで事業を立ち上げるには 」を翻訳版として発行しました。今月から、当事務所ウェブサイトに連載形式で内容の一部を抜粋し、Q&A方式で紹介していきます。ルクセンブルクで事業を行うということが、皆様にとり少しでも身近になれば幸いです。

6月にスタートした『ルクセンブルクワインラボ』というウェブ企画はおかげさまでご好評を頂いております。今月は、ルクセンブルクで創業100周年を迎える老舗、ベルナール・マッサールの後編を掲載しました。今年発売の100周年記念クレマンも試飲レポートしておりますので、ぜひ御覧ください。

 

エグゼクティブ・ディレクター

松野百合子

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