【ルクセンブルクワインラボ 研究員紹介】

  • 松野所長:一応ワインスクールで学んだ、なんちゃってワインプロ。ルクセンブルクワインを日本で広めるという密な野望を持っている。
  • 中丸研究員:ラボ一番のエピキュリアン兼グルマン。美味しいものの話になると目の輝きが違う。ワインと料理のマリアージュには興味津々。
  • 石黒研究員:「いつかは資格を」と、高い志でワインの勉強会や試飲会に積極的に参加するが、気がつくと楽しく飲んでいる、生粋のノムリエ。

第一回『シャンパーニュを理想とした創業100年のメゾン ベルナール・マッサール』

【ラボの発足】

:ルクセンブルクワインについて、もっと勉強したいですね~。

:これまで、何度か大使館でプロの方々(輸入社、ソムリエ、ワインアドバイザー、業界メディア)をお招きしてルクセンブルクワインセミナーと試飲会をしましたね。ルクセンブルクのワイン・ブドウ・インスティテュートの方やワイン生産者が講師になり、ワイン法、産地の特性、各ワイナリーの生産哲学などを話してくれました。

:プロ向けのお話も勉強になりますが、自宅で楽しむときの目線で知りたい気もします。

:大使館でのイベントの時、私たち受付とか講師の通訳などでばたばたしていて、落ち着いて聞けないですよね・・・。

:(ぎくっ)たしかに。それでは、ルクセンブルク貿易投資事務所メンバーの勉強会&試飲会、名付けて『ルクセンブルクワイン・ラボ』を立ち上げてみましょう。第一回は、今年なんと創立100周年を迎えるこちらのワイナリーでいきませんか?

ベルナール・マッサール(Caves Bernard Massard)

1921年にシャンパーニュ地方で研鑽をつんだ醸造家、ジャン・ベルナール=マッサールにより設立されたワイナリー。

ルクセンブルクの高品質スパークリングワインが世界で評価を得るきっかけを作った。

共同組合のヴァンモーゼルを除けばルクセンブルク最大規模で、年間約300万本を生産。

また、ネゴシアンとしてぶどうを買い付け生産する一方、傘下にドメーヌ・ティル、シャトー・ド・シェンゲンなど高評価のワイナリーを持つ。

ワイナリーがあるのは、モーゼル地方北部のグレーヴェンマッハー。

:ベルナール・マッサールと言えば、伝統製法で作られたスパークリングワイン「クレマン」ですよね。ところで、伝統製法とかシャンパーニュ製法とかよく耳にしますが、どういうものかご存じですか?

:ワインの瓶の中でワインをもう一度発酵させるということですよね。

:その通り。実は瓶内熟成期間などほかにも製法が細かく規定されていますが、主なポイントはそこです。一度できあがったワインの瓶に、酵母とショ糖を入れて瓶詰めすると発酵の過程で生まれる炭酸ガスがワインを発泡させます。シャンパーニュのドン・ペリニヨンの伝説が有名ですね。液体に炭酸ガスを注入するわけでなく、自然な発酵の動きをコントロールするので、技術的にレベルの高い製法です。ベルナール・マッサールの創業者、ジャン・ベルナール=マッサールはいくつかのシャンパーニュメゾンで醸造責任者まで務め、その技術に精通したそうですが、故郷ルクセンブルクに、シャンパーニュ地方と似通った土壌の土地を見つけ、ルクセンブルクでの生産を決意したと言われます。なので、最初から極めてシャンパーニュに近いワインなんですね。

:ルクセンブルクでは、シャンパーニュ製法でつくったワインを「クレマン」と呼びますが、日本でもクレマン、広めたいです!

:「クレマン」は、フランスのワイン法で定められた呼称で、シャンパーニュ製法で作られた、フランスの特定の地域のスパークリングワインを指します。現地では、コスパの良いスパークリングワイン、っていう認識です。実は、ルクセンブルクのクレマンは、フランスで開催されるクレマンコンクールに、国外から唯一参加を許されているんですよ(自慢げ)。ルクセンブルクのワイン法でもクレマンを名乗るための厳しい基準が定められているので、品質はお墨付きです。知名度をあげないといけないですね。

さて、今日試飲して頂くのはこちらです。

ベルナール・マッサール ”キュベ・ド・レキュッソン”

ベルナール・マッサール ”キュベ・ド・レキュッソン” ピノ・ノワール ブリュット

ベルナール・マッサール ”ミレジメ ブリュット” 2015

ベルナール・マッサール”キュヴェ1921 ブリュット”

全て同じ造り手のスパークリングワインばかりということで、感覚を研ぎ澄ましてその違いを感じて参りましょう!

 

  • ベルナール・マッサール ”キュベ・ド・レキュッソン”

    (シャルドネ / ピノ・ブラン/ピノ・ノワール/リースリング、アルコール度数12%)

ベルナール・マッサールの創立50周年に発売されて以来、同社を代表するクレマンとして親しまれている。

:いきなりですが、実はこれには、ルクセンブルクのワイン法に定められた「AOP Crémant de Luxembourg」のラベルがありません。製法は、あのジャン・ベルナール=マッサールさんのワイナリーですから、伝統製法でしっかり作っています。ではなぜだと思いますか?

:ベルナール・マッサールはネゴシアンなので、使っているぶどうがルクセンブルク産ではないからですか?

:正解!それでは、もう一問。シャンパーニュに使われる典型的なぶどう品種が3つあります。それは何でしょう?

:シャルドネ?

:ピノ・ノワール?

:素晴らしですね。あともうひとつはマイナーです。ムニエというぶどうです。実はルクセンブルクで作られるワイン用ぶどう品種には、元来シャルドネやピノ・ノワールはほとんど入っていませんでした。最近は地球温暖化の影響や、クレマン生産の増加もあり、ピノ・ノワールもシャルドネも作付面積が増加しています。

ベルナール・マッサールは、彼らの目指すシャンパーニュ的な味わいを生み出すために、国外からシャルドネを輸入して使っているのです。だから、「100%国産ぶどうを使ったワイン」のみに与えられるAOPはこのワインには適応されないんですよ。ただ、彼らにはルクセンブルク産のぶどうだけで作るクレマンもありますので、それは後ほどテイスティングしてみましょう。

ワインテイスティングの方法として、色などの外観、香り、口に含んだ時の味わいを評価します。クレマンを試飲する際にぜひ意識して頂きたいのが、グラスの中で立ち上る泡の細かさや勢い、そして口に含んだ時の泡のクリーミーさなどです。さあ、いかがでしょうか?

【お断り:若干準備に手違いがあり、キュベ・ド・レキュッソンは温度が高すぎで、抜栓の際にコルクが飛び、中身がテーブルにあふれ出すという事態に・・・。バタバタした結果、落ち着いて試飲ができませんでした!

これまで、何度も飲んだ感想としては、とてもバランス良く、基本に忠実な上品なスタイルです。細かな泡ときれいな酸味が軽やかでアペリティフにぴったりでした。】

:(汗)それでは、気を取り直して、次のボトルを試飲しましょう!

 

  • ベルナール・マッサール ”キュベ・ド・レキュッソン” ピノ・ノワール ブリュット

(ピノ・ノワール、アルコール度数12%)

:ボトルのデザインがキレイですね。グラスに注ぐときれいな淡いオレンジ色です。

:香りは、果物の・・・イチゴのような甘い香りが感じられるような。

:このロゼはピノ・ノワール100%ですから、品種の特徴であるベリー系のジャムのような香りがありますね。味わいはどうでしょうか?

:意外とドライですっきりしています。ロゼワインという一般的なイメージや色からは、もっと甘いものを想像していましたが、良い意味で裏切られました。

:泡はクリーミーで良いボリューム感ですね。後味に若干のタンニンを感じるのも、食事に合わせやすそうです。具体的製法を確認しないとわかりませんが、これはおそらく「セニエ方式」と呼ばれる、果汁に果皮をしばらく浸漬して適度に色が付いたら果皮を引き上げるやり方で作っています。ロゼ・シャンパーニュでも主流の方式で、果実の繊細な味わいが感じられます。セニエ方式のロゼワインの特徴はタンニンが多く色が濃いことですが、最近のロゼワインは、セニエの際に過度の色素が果汁に移らないよう配慮し、柔らかなオレンジ色に近い外観を目指すのが主流だそうですよ。

:テイスティングから作り方も想像できるんですね。

 

:さて、ワインは基本的にお食事と楽しむものですから、お料理とのマリアージュを考えてみましょう。

:後味に残る渋味との相性を考えて、僕はしっかりした味のシーフード料理と一緒に味わいたいです。例えばオマール海老のビスクとか、手長えびと帆立貝のナージュ仕立てとか。後はシンプルにイカの炙り焼きなどもきっといいですね。

:クレマンがすっきりしているので、私はシーザーサラダなど少しこってりしたものと合わせたいです。

: 私は高級な焼き鳥かな。塩だけで楽しめるようなものが合いそうです。

 

後編に続く]

 

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